相続した土地を国が引き取る制度がスタート
2023年04月15日
不要な土地を相続した場合、売却することが理想ですが、すべての土地が売れるわけではありません。買い手がつかなければ「”負”動産」となってしまいます。
「遠くに住んでいて利用する予定がない」「固定資産税など管理の負担が大きい」…などといった理由により、相続した土地を手放したいというニーズに対し、「相続土地国庫帰属法」という新しい法律がまもなく2023年4月27日からスタートします。
この法律は、相続等で土地を取得した相続人が、一定の要件を満たした土地を国庫に帰属させる制度です。
今回は「相続土地国庫帰属制度」について解説します。
「相続土地国庫帰属制度」とは
「相続土地国庫帰属制度」は、相続などによって宅地や田畑、森林などの土地の所有権を相続した人が、一定の要件を満たした土地を手放して、国に引き渡すことができる新しい制度です。
次のような目的で制定されました。
・相続で取得した土地が管理されず放置されるのを防ぐ
・所有者不明土地の発生を予防する
相続土地国庫帰属制度と相続放棄との違い
これまで不要な不動産を相続したくない場合は「相続放棄」が用いられてきました。
相続放棄は相続自体を拒否するため、いらない土地だけを放棄するということができず、相続をすべて放棄する必要があります。
一方で相続土地国庫帰属制度は、不要な土地だけを放棄することが可能。ただしすべての土地を帰属できるわけではありません。
相続土地国庫帰属制度のメリット・デメリット
望まずに相続した土地は、相続土地国庫帰属制度を活用して国庫に帰属させることもひとつの方法ですが、メリットやデメリットがあります。
メリット
・いらない土地だけを手放すことが可能
・自分で探す必要がない
・国が引き取るため引取後も安心
先述のとおり、これまでは相続放棄制度を利用することが一般的で、優良な資産も一緒に放棄せざるをえませんでした。同制度では、優良資産は引き継ぎつつ、いらない土地だけを手放すことができることがメリット。
また土地の買い手や引き取り手を自分で探す必要がなく、買い手がつかない利便性の低い土地でも要件を満たしていれば国が引き取ってくれます。国が引き取り手なので、引取後の管理も安心です。
デメリット
・国の審査に合格する必要がある
・負担金や手数料などお金がかかる
・国に引き継がれるまでに時間や手間がかかる
相続土地国庫帰属制度で国に土地を帰属するには、条件を満たさなければ申請できません。どんな土地でも帰属できるわけではないため注意が必要です。
そして最大のデメリットは、お金がかかること。
土地を売却するのであれば、土地の所有権と引き換えに土地の価値に見合う代金が手に入りますが、同制度を利用し国に土地を帰属すると、逆に負担金や手数料といった費用が必要です。
また実際に土地の引き渡しが完了するまでに、多くの時間や手間がかかります。登記の確認や担保権や借地権の抹消など事前準備も必要です。
帰属できない土地
相続した土地であっても、すべての土地を国に引き渡すことはできません。
帰属できない土地の要件は「申請の段階で却下となる土地」と「該当すると判断された場合に不承認となる土地」の2種類です。
以下の10の要件に一切該当しなければ、承認を受けられます。農地や山林も該当していなければ利用可能です。
申請の段階で却下となる土地
・建物がある土地
・担保権や使用収益権が設定されている土地
・他人の利用が予定されている土地
・特定の有害物質によって土壌汚染されている土地
・境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
該当すると判断された場合に不承認となる土地
・一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
・土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
・土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
・隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
・その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
費用について
相続土地国庫帰属制度を利用するには、費用がかかります。
審査手数料は、土地一筆当たり14,000円。申請時に相当額の収入印紙を貼って納付します。
その後国の審査に合格したら、10年分の標準的な管理費相当額を「負担金」という形で納付しなければなりません。
負担金は、1筆ごとに20万円が基本ですが、一部の市街地の宅地、農用地区域内の農地、森林などについては、面積に応じて負担金を算定するものもあり、20万円以上の負担金が必要となる場合もあります。
まとめ
まもなく施行される「相続土地国庫帰属法」。
使い勝手の悪い土地などを相続したとしても、買い手さえ見つかれば、売却代金を得られるうえ、維持管理コストもかからなくなるので一石二鳥です。
しかし売れなければ土地を維持するにもコストがかかるため、今後は相続土地国庫帰属制度を利用し、国に引き取ってもらうことも選択肢となるでしょう。
解説したとおり、同制度には費用がかかるなどのデメリットもあります。ご自身や家族の状況をよく考え、適切な選択をしましょう。