一般健康診断の法定項目について解説

2025年01月15日

企業が労働者に対して実施が義務付けられている「一般健康診断」。「法定検診」とも呼ばれます。

 

一般健康診断は、従業員の健康を守るための重要な施策。従業員の健康状態を把握し、疾病の早期発見や予防を目的としています。

 

企業は従業員に対して、一定の基準に基づき、必要な項目を検査することが求められています。

 

今回は一般健康診断の種類や法定項目などについて解説します。

健康診断

一般健康診断の種類

一般健康診断には、主に以下の種類があります。

 

・雇い入れ時の健康診断

・定期健康診断

・特定業務従事者の健康診断

・追加健康診断(オプション) …など

 

 

それぞれの目的や対象者に応じて実施されますが、全ての企業に共通する健康診断が、「雇い入れ時の健康診断」と「定期健康診断」です。

 

追加健康診断にはストレスチェックや喫煙者向けの検診などがあります。

雇入れ時健康診断

雇い入れ時の健康診断は、新しく入社する従業員に対して、企業が実施を義務付けられている健康診断です。労働安全衛生法第66条に基づき、労働者が業務を開始する際の健康状態を把握し、安全かつ適切な労働環境を提供することを目的としています。

実施の対象

・正社員、契約社員、アルバイトなど、雇用形態を問わず、全ての新規採用者が対象。

・雇用期間が1年以上見込まれる労働者、または1週間あたりの労働時間が通常労働者の4分の3以上の者。

実施のタイミング

原則として 雇用開始前または雇用開始後すぐ に実施する必要があります。

 

健康診断の結果が有効とされる期間は一般的に3か月以内。過去に受けた健康診断結果があれば、これを代用することも可能です。

検査項目

雇入れ時健康診断の検査項目は、以下の11項目です。検査項目を省略することができません。

 

 

・既往歴及び業務歴の調査

自覚症状及び他覚症状の有無の検査

身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査

胸部エックス線検査

血圧の測定

貧血検査(血色素量および赤血球数)

肝機能検査(GOT、GPT、γ-GT)

血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)

血糖検査

尿検査(尿中の糖および蛋白の有無)

心電図検査

定期健康診断

定期健康診断は、従業員の健康状態を定期的に確認し、疾病の早期発見や予防を目的として企業が実施を義務付けられている健康診断。

 

1年以内に一度、必ず定期健康診断を受けさせなければなりません。

実施の対象

・正社員、契約社員、アルバイトなど、雇用形態を問わず、全ての新規採用者が対象。

・雇用期間が1年以上見込まれる労働者、または1週間あたりの労働時間が通常労働者の4分の3以上の者。

 

短期間のアルバイトや派遣労働者、請負契約や業務委託契約者は実施対象外です。

実施のタイミング

定期健康診断は、1年に1回、全従業員を対象に実施することが義務付けられています。間隔を1年以上空けることはできませんので、注意しましょう。

検査項目

雇入れ時健康診断の検査項目は、以下の11項目。★の検査項目は、医師の判断によって省略可能です。

 

 

・既往歴および業務歴の調査

・自覚症状および他覚症状の有無の検査

・★身長、体重、★腹囲、視力、聴力の検査

・★胸部エックス線検査 及び★喀痰検査

・血圧の測定

・★貧血検査(血色素量および赤血球数)

・★肝機能検査(GOT、GPT、γ-GT)

・血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、★血清トリグリセライド)

・★血糖検査

・尿検査(尿中の糖および蛋白の有無)

・★心電図検査

検診

よくある疑問まとめ

ここからは、一般健康診断に関するよくある質問を解説します。

Q. 健康診断の費用負担は誰がするの?

A. 会社が負担します。

 

健康診断は自由診療で、保険適用外です。費用は一人当たり5,000円~15,000円が一般的。会社は、費用のほか、設備や予約の取りやすさも考慮して実施機関を選びましょう。

Q. 健康診断を受けなかったらどうなるの?

A. 企業に罰則が科される可能性があります。  

 

 

康診断は企業の義務であり、対象従業員が受診しない場合、企業に50万円以下の罰金が科される可能性があります。受診拒否への対応として、就業規則で懲戒処分の対象となることを明示し、事前に従業員へ周知しておきましょう。

Q. 健康診断結果の保存期間は?

A. 会社で5年間保管する必要があります。  

 

保存形式は、紙媒体でも電子データでも可能。  健康診断結果は要配慮個人情報に該当するため、取得には原則本人の同意が必要です。

Q. 所轄労働基準監督署への報告は必要?

A. 従業員規模が50人以上の場合に必要です。  

 

「定期健康診断結果報告書」を提出する必要があります。  提出に必要な書式は厚生労働省のサイトでダウンロード可能です。  50人未満の企業は報告義務はありませんが、健康診断の実施義務はあります。

Q. 定期健康診断の結果はいつまでに通知される?

A. 健康診断後、速やかに結果を通知する必要があります。  

 

労働安全衛生法では具体的な期限は定められていませんが、業務への影響を考慮し、早めの通知が推奨されます。

Q. 健康診断で異常が見つかった場合の対応は?

A. 医師の意見を聴取し、作業環境の改善や業務内容の見直しを検討します。  

 

従業員の健康を守るため、必要に応じて業務の軽減や配置転換を行うことが求められます。  

Q. 健康診断は従業員全員が対象?

A. 原則として、すべての従業員が対象です。  

 

ただし雇用期間が1年未満や、週の労働時間が通常労働者の4分の3未満の労働者は対象外の場合があります。

まとめ

健康診断は従業員の健康を守るだけでなく、企業の法令遵守や業務効率の向上にもつながります。

 

また会社にとって従業員は大きな財産です。企業は従業員が健康に働けるようしっかり健康診断をおこないましょう。